さくらの将棋研究室

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遠山雄亮著「将棋・ひと目の歩の手筋」のレビュー

本記事は2020年3月11日に発売された遠山雄亮著「将棋・ひと目の歩の手筋」が超良かったよという内容のものです。

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手筋本の名著とは? 

級位者が上達する上でよく勧められる勉強法は「詰将棋」・「手筋」・「定跡」です。

詰将棋本については浦野真彦先生のハンドブックシリーズが最も有名です。

級位者に対して「詰将棋本はこれをやっておけば間違いない」と自信を持って勧められる本です。

それくらい網羅性・完成度が高く、名著であることに異論はないと思います。

他にも詰将棋本には素晴らしい本が多数あります。

3手詰ハンドブック

3手詰ハンドブック

  • 作者:浦野 真彦
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本
 
3手詰ハンドブック〈2〉

3手詰ハンドブック〈2〉

  • 作者:浦野 真彦
  • 発売日: 2013/05/01
  • メディア: 単行本
 

 

一方で、手筋本はどうでしょうか。

いくつか有名な本があり、私が級位者に対してよく勧めるのが「将棋・ひと目の手筋」 です。

基本的な手筋が部分図を使って網羅されており、難易度も級位者にとって丁度良いものに仕上がっています。

網羅性・完成度が高く、発売から10年以上経った今でも色褪せることのない良著です。

将棋・ひと目の手筋

将棋・ひと目の手筋

 

しかし、実戦で現れにくい・級位者では真似しにくい手筋を一部扱っていたり、部分図が分かりにくい問題があったり、正直私としては不満な点がいくつか見受けられる本です。

 

他には「将棋基本手筋コレクション432」が有名ですが、雑多に手筋問題が収録されている演習本といった感じです。

とにかくたくさんの問題を解けるので、将棋の上達に大変役立つ良著です。

「次の一手」で覚える将棋基本手筋コレクション432 (将棋連盟文庫)

「次の一手」で覚える将棋基本手筋コレクション432 (将棋連盟文庫)

  • 発売日: 2016/06/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ただ、難易度が高かったり解説が不足していたりする問題がある程度含まれていることもあり、級位者には少し勧めにくい印象を抱いています。

 

どの本も大変な労力が注がれた本であることは理解しつつも、「手筋本はこれをやっておけば間違いない」と級位者に勧められる本が、私の目から見てないのが率直な感想です。

 

さて、今回紹介したい本は冒頭でも紹介した遠山雄亮著「将棋・ひと目の歩の手筋」です。

最初に結論を言っておくと、本著は級位者向けの手筋本の名著になると思っています。

 

本著の構成は以下の通りです。

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< 目次 >
第1章 歩の必修手筋(30問)
第2章 棒銀における歩の手筋(30問)
第3章 三間飛車における歩の手筋(60問)
第4章 相振り飛車における歩の手筋(60問)

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歩の手筋しか扱っていないのか?

本のタイトルが若干誤解を招きやすい気がするのですが、歩以外の手筋も多数盛り込まれています。

歩を使ったその先に「割り打ちの銀」など他の駒の手筋も度々登場します。

「歩の手筋」というタイトルですが、中身としては重要な手筋が一通り網羅された手筋本です。

 

なぜ戦法別の章立てなのか?

手筋本の中には駒別に章立てされたものがあります。

これはこれでメリットが大きいと思うのですが、この章立ての仕方は初心者・初級者が学ぶ過程としてやや不自然な気がしていました。

 本著コラムで言及されていますが、著者である遠山先生は上達するステップとして

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駒落ちでハンデをつけてもらい、一番強い駒である飛車と角の攻めを学ぶ。

棒銀で他の駒を協力させる攻めを学ぶ。

振り飛車、特に棒銀に対して相性のよい三間飛車で囲いの作り方など受けを学ぶ。

振り飛車を指すと避けて通れない相振り飛車を覚え、囲いの崩し方を学ぶ。

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といった流れを提案しています。

本著もそのような考えに基づき戦法別の章立てになっているため、即効性が高い内容になっています。

「私、中飛車しか指さないのよね」という方も気にする必要はありません。

棒銀三間飛車・相振り飛車という3つの戦法を題材にあくまで基本的な手筋を扱っているので、他の戦法においても応用しやすい手筋ばかりです。

本著まえがきでも書かれている通り、「手筋を覚える」ことも大切ですが、その背景にある「ロジックを理解する」ことも重要です。

ロジックを理解することで、実戦でも応用がきくようになります。

本著の問題を解き解説をじっくりと理解することは、どの戦法を指す人でも有効なのです。

棒銀は指さないから」「三間飛車は指さないから」といった理由だけで、本著の購入を保留している人は、少し考え直してほしいと思います。

 

実戦で現れやすく確実な手筋しか扱っていない

これまでの手筋本は、実戦で現れにくかったり、級位者では真似しにくかったり、実用性が微妙な手筋も平気で扱っていたように私は感じています。

「手筋本」というより「手筋辞典」といった方が近い構成だと思います。

一方本著は、実戦で現れやすく級位者にとって確実な手筋しか扱っていません。

無駄な問題は一問たりともありません。

 

問題が難易度順に並び、同じ種類の手筋が度々登場する

章立てを工夫したのもあり、本著では難易度が易しい問題から徐々にステップアップするように構成されています。

また、大別すると同じ種類の手筋が度々登場するもの本著の特徴の一つです。

これまでの手筋本は網羅性を重視するあまり、「手筋を知識として知っている」状態から脱却できない難点があるように私は感じていました。

一方本著は、よく見ると同じ種類の手筋が局面を変えて度々登場します。

「手筋を知っている」状態から「手筋を使える」状態へステップアップできるよう配慮されています。

従って、本著で扱っている正味の手筋の種類はそれほど多くありません。

ただ、これまでの手筋本の網羅性が高すぎただけで、本著の網羅性は十分すぎるほどだと思います。

本著は「手筋を覚える」本ではなく、「実戦で頻出の手筋を覚えて使えるようになる」本なのです。

 

本著を読み進めるのに必要なものは?

駒の動き方などルールを覚えたばかりの初心者であれば、浦野先生の「1手詰ハンドブック」を繰り返しやってください。

これで駒の利きが分かるようになります。

1手詰ハンドブック

1手詰ハンドブック

  • 作者:浦野 真彦
  • 発売日: 2009/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

その次は同シリーズの「3手詰ハンドブック」に取り組んでください。

これで脳内で何手か駒が動かせるようになり、本著をスラスラ読み解く下地が出来上がります。

3手詰ハンドブック

3手詰ハンドブック

  • 作者:浦野 真彦
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本
 
3手詰ハンドブック〈2〉

3手詰ハンドブック〈2〉

  • 作者:浦野 真彦
  • 発売日: 2013/05/01
  • メディア: 単行本
 

3手詰ハンドブックと並行して棒銀三間飛車・相振り飛車の基本的な指し方を勉強してください。

この段階ではそれぞれの戦法の本格的な定跡書に取り組む必要はありません。

あくまで「こんな感じで指す」といったざっくりした知識で構わないと思います。

この辺りは遠山先生が日興フロッギーにて連載していた将棋入門の記事が役立つと思います。

 

遠山雄亮著 3分でわかる・大人の教養としての将棋入門(全8回)

froggy.smbcnikko.co.jp

 

さいごに

詰将棋本は浦野先生の「3手詰ハンドブックⅠ・Ⅱ」

手筋本は遠山先生の「 将棋・ひと目の歩の手筋 」

をやっておけば、初段くらいを目指す人にとって十分な基礎力が身に付くと、自信を持って勧められます。

本著はとても洗練されており、相当な時間をかけて推敲されたことが窺えます。

本著が手筋本の名著になると確信しています。