さくらの将棋研究室

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【詰将棋】AIが看寿賞を受賞する日は来るのか?

< 目次 >

 

コンピュータソフトが升田幸三賞を受賞

2020年4月1日に第47回将棋大賞が発表されました。

賞の一つである升田幸三賞には、「elmo(エルモ)囲い」を流行させた功績が認められ、コンピュータ将棋ソフト「elmo」(開発者:瀧澤誠氏)が選ばれました。

www.shogi.or.jp

hochi.news

升田幸三賞は新手・妙手を指した者や定跡の進歩に貢献した者に与えられる賞で、人間以外が受賞したのは史上初となります。

実はelmo囲いの形自体は以前から存在し、前回も受賞の対象となっていました。

ファン投票にもあったエルモ囲いに関しては、丸太祐三九段が指して、かなり体系化しており、棋士からは「これはエルモ囲いではない」と聞いたことがある。受賞者を特定するのは難しい。(読売新聞・吉田祐也)-将棋世界2019年6月号-

様々な意見はあろうかと思いますが、この囲いが対振り飛車に有力であることを示唆し、流行のきっかけとなったelmo及びその開発者の功績は、誰もが納得するところでしょう。

 

ソフト発の戦法が受賞するのは今回が初めてではありません。

第44回には千田翔太七段が「対矢倉左美濃急戦」と「角換わり腰掛け銀△4二玉・6二金・8一飛型」で受賞しています。

ただ、これは元々コンピュータ将棋ソフトが有力視していた戦法です。

コンピュータ将棋ソフトに造詣が深い千田翔太七段は、これらの戦法を人間の指し将棋でも使えるように研究・体系化しました。

その功績が認められ、受賞に至ったわけです。

このときにも様々な議論がありましたが、千田七段の貢献度を考えればほとんどの人が納得のいく受賞だったかと思います。

実際に矢倉と角換わり腰掛け銀の定跡がここ数年で大きく変わったのは、皆さんも知るところでしょう。

 

第45回には青野照市九段が「横歩取り青野流」で受賞しています。

横歩取り青野流」はソフト発ではなく、青野照市九段とそのお弟子さんが一緒に研究をして作り上げた戦法です。

www.shogi.or.jp

ただ、横歩取り青野流の流行の裏には、コンピュータ将棋ソフトが有力視していたのも少なからず影響していたと思います。

 

今や将棋界では、人間がコンピュータ将棋ソフトとどう付き合っていくかというのが課題になっており、切っても切り離せない関係になっています。

 

詰将棋の解答者としてのコンピュータソフト

コンピュータの高い演算能力を活かして、詰将棋をコンピュータソフトに解かせる試みも以前から行われています。

例えば、パナソニック将棋部の脊尾昌宏氏が開発した「脊尾詰」があります。

panashogi.web.fc2.com

橋本孝治作の1525手詰「ミクロコスモス」の解答が可能であり、詰将棋の解答ソフトとして高い能力を有しています。

他には、柿木義一氏が開発した「柿木将棋」があり、これも高い解答能力を有しています。

kakinoki.o.oo7.jp

脊尾詰や柿木将棋は詰将棋を解答するだけでなく、余詰を検出する機能などが備わっています。

それまでは人間の力だけで余詰などの確認を行っていたため、詰将棋パラダイスなどの専門誌に掲載された後で不完全作と判明するケースがありました。

脊尾詰や柿木将棋といった詰将棋解答ソフトの登場は、詰将棋界にも大きな影響を与え、今や詰将棋作家にとって必需品になっています。

ameblo.jp

 

詰将棋の創作者としてのコンピュータソフト

では、詰将棋を創る方はどうでしょうか。

詰将棋には芸術作品としての側面もあり、高い技術に加え創造性が求められます。

従って、詰将棋の創作というのは、「AIに文学作品が創れるか」というテーマに近いところがあります。

pdmagazine.jp

 

コンピュータソフトに詰将棋を創作させる様々な試みが既に行われています。

ただ、ブレイクスルーと呼べるほどの技術は確立されていないのが現状のようです。

toybox.tea-nifty.com

例えば、広瀬正幸氏・伊藤琢巳氏・松原仁氏の学術研究チームが発表した「逆算法による詰め将棋の自動創作」という論文が挙げられます。

ci.nii.ac.jp

この論文では、傑作と呼べる水準には達していないものの、詰将棋の創作がある程度可能であることが述べられています。

詰将棋の評価は当然人それぞれ異なりますし、ましてやそれを定量化するのはもっと難しいでしょう。

 

異なるアプローチとして、人間とコンピュータが協調して創作する試みが行われています。

toybox.tea-nifty.com

人間とコンピュータが得意・不得意を互いに補完し合うのは、現状ではとても現実的なように思えます。

興味深い作品がいくつもありますので、是非上記の記事で鑑賞してみてください。

 

さて、記事のタイトルに「AIが看寿賞を受賞する日は来るのか?」と書きましたが、現状はまだまだ先の話になりそうです。

コンピュータが創る傑作詰将棋を見たい反面、しがない詰将棋作家の一人として創作の楽しみが奪われる怖さもあります。

詰将棋作家とコンピュータソフトがどう付き合っていくか。

これを真剣に考えるの日は遠い未来か近い未来か…。